2018年07月12日

年次有給休暇の当日の申し出

質問

年次有給休暇って、いつまでに会社に申し出る必要がありますか?

体調の悪いときや急な用事のときに使いたいと思ったのですが、当日の申し出では駄目なのでしょうか?

回答

労働基準法の年次有給休暇について、何日前までに申し出なければならない旨の定めは、法律上はありません。

そして、労働基準法の年次有給休暇は、労働基準法の要件を満たせば、労働者の当然の権利となります。

しかも、使用者は年次有給休暇を、労働者の請求する時季に与えなければならないという原則があります。

一方、使用者には、時季変更権といわれるものがあります。

労働者の請求した年次有給休暇の日時が、事業の正常な運営を妨げる場合には、他の日時に与えることができる、というものです。

ですので、論点としては、事業の正常な運営を妨げるか否か、ということであると考えます。

年次有給休暇を使った場合に、他の労働者により補うことができるか否か、そして、使用者が不足する労働力の確保の努力をしたか否か、ということが、判断の材料になると考えます。
(つまり、使用者の時季変更権の行使には、条件があるということです。)

したがって、職場の労働力確保の実態次第というのが、本当なのだと思います。
(当日の申し出も、可能な場合があるということです。)

しかし、それだけですと、まさにケースバイケースになってしまうので、トラブルの原因になってしまうことがあるでしょう。

だから、就業規則で「何日前までに〜」というような書き方で、事前に申し出る旨を定めていることが多いと考えます。
(「何日前までに〜」というのも、あまりに長い日数であれば、労働者には不利益ですので、無効であると考えます。)

さて、使用者の時季変更権行使に時間が必要だから、その確保のみを理由として、当日の申し出を否定するのは、判例を見ると正しくないことが理解できます。
(無条件に「前日までに」とすることはできない、ということです。)

ですので、当日の申し出を認める場合や当日を欠勤としても後日に年次有給休暇として扱う場合を、就業規則に列記するといった方法が、トラブルを少なくすると考えます。

労働者と使用者が話し合い、ルール・制度を整備することが、現実的であると考えます。

posted by アドバイザー at 15:23| 休日・休暇 | 更新情報をチェックする

2012年08月02日

年次有給休暇の買い取り(買い上げ)

質問

私の働いている会社は忙しいのに社員が少なく、なかなか休みを取ることができません。

これって、仕方無いのでしょうか?

また、年次有給休暇は買い取ってもらえると友人から聞いたことがあるのですが、これはどのような制度ですか?

回答

年次有給休暇の未消化が発生するのは、本来問題です。

年次有給休暇は疲労の回復だけでなく、私的な生活の充実のために権利として認められているのですから、利用できないのであれば権利を侵害されていることになります。
(年次有給休暇を与えなかった場合については、罰則もあります。)

まずは、自分の希望する日をきちんと使用者に届け出てみましょう。
(それに対して使用者がどのような応答をするかです。)

使用者には、請求された時季に年次有給休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合に他の時季に与えることができる、という時季変更権があります。

したがって、事業の正常な運営を妨げる場合には、労働者の指定とは異なる日に年次有給休暇を与えることができることになります。

しかし、年次有給休暇を必ず与えなければならないことに変わりはありませんし、使用者が人員不足を時季変更権の行使の理由とするには、使用者が普段から適正な人員配置を行っていることが必要と考えます。

ですので、使用者の対応次第では、労働基準監督署に指導・救済を求めるべきでしょう。

ところで、年次有給休暇の買い取り(買い上げ)ですが、原則として認められるものではありません。
(労働者と使用者との間で合意があっても、駄目です。)

なぜなら、労働者の当然の権利である年次有給休暇が、使用者に買収されることになってしまうからです。

原則と書きましたが、認められる例外には、時効により消滅した年次有給休暇があります。

年次有給休暇の請求権は2年で時効となりますので、消滅した部分については買い取り(買い上げ)も可能ということです。

ただ、年次有給休暇は時効になる前に取得されるべきものですから、取得が難しい職場環境の改善が第一です。
(買い取り(買い上げ)を制度化するようでは、本末転倒ではないでしょうか。)

posted by アドバイザー at 16:29| 休日・休暇 | 更新情報をチェックする

2011年11月30日

自宅待機

質問

飲食店で、正社員として働いています。
お店は年中無休で、正社員とパートタイマーで切り盛りしています。

私の不満は、休日に自宅待機の日が、設けられていることです。

社員の休日はシフト表で決まるのですが、交替制のような形で自宅待機の日が割り振られます。
(採用の際に、パートタイマーの欠勤等の人員不足に備えて、このようにしていると、説明がありました。)

会社からは、連絡後、2、3時間で出社できる範囲であれば、外出してもらって構わないと言われていますが、私にはとても気になっています。
(出社命令の頻度は、2、3か月に1度ぐらいです。)

休日は気楽に過ごしたいので、自宅待機の日があるのは、本当に嫌なのです。
会社に改善を求めることは、できないのでしょうか?

回答

休日は労働者にとって、労働から解放される日で、私生活のために用いることのできる自由な日です。
会社や仕事のことを忘れて、気楽に過ごしたいあなたの気持ちは、よく分かります。

一方、会社の都合としては、社員を増やすほどではないし、社員を増やせば余計なコストになる、ということでしょう。
正社員なのだから、緊急的な対応を任せるのは当たり前だ、という意識なのかもしれませんね。

さて、本筋に入りましょう。
まず、自宅待機の時間が、法的にどう取り扱われるべきかを考えてみます。

自宅待機といえども、労働者は出社命令に備えていますから、全くの自由ではありません。

そうかといって、自宅待機中に何もできないかといえば、作業義務があるわけでもないので、かなり融通性のある時間だともいえます。

つまりは、自宅待機の時間が、労働時間に当たるかどうか、ということを、考えるしかなさそうです。

正直なところ、はっきりしない話です。
仮眠時間についての判例が、労働時間に当たるとしたもの、当たらないとしたもの、両方あることを考えますと、一概に言える話ではないというのが、本当のところです。

自宅待機をなくすことを会社側に求めても、改善されないということであれば、労働時間に当たること(賃金の支払い)を求めて、訴えを提起する必要があるだろうと考えます。
(裁判は手間がかかりますから、都道府県労働局のあっせんや労働組合の活用で、解決がなされるといいと思うのですが。)

ただ、自宅待機の時間が設けられていることが、労働者のモチベーションにマイナスだということは、はっきりしています。

ですから、自宅待機について特別な手当てを支払うとか、休日を増やすといった、労働者に配慮した労働条件を整備することが望ましいのです。

代替的なようですが、特別な手当てや休日の増設を求めて交渉するというもの、方法だと考えます。

posted by アドバイザー at 10:54| 休日・休暇 | 更新情報をチェックする